第3章 ホグワーツの戦い
ある日の午後のことだった。
ハリーが果樹園を散歩しようと外に出ると、ジニーが追いかけてきた。
しばらくジニーはハリーの隣に並んで何も言わず歩いた。
10分ほど歩いて、2人はどちらともなく木下の日陰に腰を下ろした。
「学校が始まったら、また会えなくなるわね」
ジニーがそっと言った。ジニーは今度、7年生になる。よく考えるとハーマイオニーと同学年だ。
「私、戻りたくないわ」
ハリーはジニーを見た。ジニーの声が震えているような気がしたからだ。
ジニーの、燃えるような瞳は悲しげだった。
ジニーはフレッドの葬儀の時も、泣かなかった。唇をぎゅっと結んで、母親の背中を撫でていた。
そういう、めそめそしないところところはジニーの魅力の1つでもある。でも、ハリーはジニーがあの日からずっと、夜中自分の部屋で泣いていることを知っていたし、時には弱さを見せてもいいのにと思っていた。
戻りたくない理由をなんだか聞きたくなくて、ハリーは黙ったままでいた。
黙ったままでいるのが耐えられなくて、間を埋めるようにキスをした。
思えば最後のキスは去年の夏だった。ジニーの唇の感触で、ジニーがそこに確かに存在していることを感じた。
1年ぶりにキスをしたらなんだか泣きたくなった。耐えてきたものが溢れそうだった。
目を細めて耐えていると、またジニーが言った。
「戻れないわ。あなたがそんな顔をしているのに」
ハリーはジニーを見つめた。
何を言っているのかわからなかったのだ。そして、ハリーは、ジニーがついに泣いてしまうのではないかと思った。大きな鳶色の瞳が涙に濡れているように見えた。
「あなたのせいじゃないわ。」
ジニーは顔を歪め、絞り出すように言った。
「あなたのせいじゃないわ。
みんな戦いたくて戦ったのよ。
平和のために、家族のために、友達のために…。
あなただってそうだったでしょう?」
ハリーは恋人を見つめた。ジニーはとても美人だ。
ジニーは続けた。
「みんな、命を懸けたのよ。あなたと、同じだったのよ…。」