第3章 ホグワーツの戦い
Side Sirius ~from heaven~
シリウスは大きな憂いの篩のような池を食い入るように見つめた。
ジェームズやリリー、ダンブルドアなど、そこにいるみんながそうしていた。
今日来たばかりのスネイプ、リーマス、トンクス、フレッドも一緒に。
この憂いの篩は現世にあるものとは違い、死んだ天界の者たちが現世の様子を見るために使われている。
死後の世界は眠りの世界だ。しかし、だからと言ってまったく意識がないわけではない。自分が目で見ているのか頭で考えているのか、魂で感じているのかわからないが、憂いの篩は真実を見せるものであるし、今日「来た」のがリーマスとトンクスとフレッドだということもわかるし、姿が見える、ような気がする。
シリウスが死んで2年間で死後の世界についてわかったことはこれだけだ。
しかしシリウスにとっては今はそんなことよりも憂いの篩の中身の方が重要だった。
「エクスペリアームス!!」
ハリーが叫んでいる。
「アバダケタブラ!」
ヴォルデモートも叫ぶ。
ジェームズが怒ったようにいう。
「俺の息子に何やってんだあの糞野郎の卑怯者の…」
「ジェームズ黙って」
リリーが言うとジェームズはすぐに従った。心なしかスネイプがジェームズを睨んでいる。
ヴォルデモートの両眼が見開かれ、仰向けにばったり倒れた。
ジェームズは歓喜の声をあげた。
リリーは大粒の涙を二筋こぼした。
2人とも心底ハリーを誇りに思っていた。
「ハリー、よくやった」
ジェームズが呟いた。
「やったぜ!!おいジョー…」
フレッドが歓声をあげたが、双子の片割れがいないことに気づいて悲しそうに口をつぐんだ。
しかし、それを皮切りにみんなが口々に喜びの声を上げる。
ただ2人、ダンブルドアとスネイプの2人を除いて。