第3章 ホグワーツの戦い
~19年前 ホグワーツの戦い~
「ハリーポッターは死んだ!」
ヴォルデモートの声が遠くに聞こえた。
フレッドの頬を撫でながら泣いているロンと、ロンの肩を抱いているハーマイオニーが蒼白になって顔を見合わせたのを見た。
周りがざわめいた。
ジニーは何が起こっているのか分からなかった。
フレッドを失った悲しみで自分がおかしくなっているのかもしれないと思った。
そこに立ち尽くしていると、1番先にマグゴナガル先生が真っ青な顔で玄関ホールに飛び出して行った。他の生徒がそれに続いていくのをぼんやり眺めながら、行かなきゃ、と思った。でも、足が動かなかった。
ロンとハーマイオニーが走っていくのを見て、ジニーは火がついたように飛び出した。
玄関ホールに出るとひんやりした空気に肌が触れて、ヴォルデモートが高笑いしているのが見えた。
そして、ハグリッドが…ハグリッドが抱いているのは…。
ハリーだった。ありとあらゆる方向に伸びた黒い髪はそのままで、閉じた緑色の瞳はもう見えない。そして、だらんとした腕はピクリとも動かない。
ハリーは、死んでしまった。
自分が叫んだ声も聞こえなかった。
パパがジニーの肩を抱いた。
ヴォルデモートが何か言って、ネビルが前に出て何か話している。みんなが叫んでいる。
でもジニーだけは、何も言えなかった。何も聞こえなかった。
どちらが勝とうが、そんなのはもうどうだっていい。
ジニーはもう何もかもなんでもよかった。どうでもよかったし、もう帰りたかった。
戦いたくなかったし、ヴォルデモートが支配するならもうそれもどうでもよかった。
だって、ハリーがいない世界では、どちらにしてももう希望なんてないのだから。
その時、ケンタウルスの群れが城に向かって走って来た。
巨人も襲いかかって来た。
ネビルがあの、ハリーがあの時持っていたのと同じ剣で蛇を殺したのを見た。
みんなが叫びながら城に、戦いに戻っていく。
「ジニー!しっかりしろよ!フレッドやハリーの死を無駄にするな!」
ジョージがジニーの横をリージョーダンと一緒に通り過ぎる時、肩を揺さぶった。