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青色幻燈

第2章 寒地にて



岩手というのは、東北地方にある寒い寒い土地だ。雪が沢山振って、強い冷たい風が夏でも吹く厳しいところなのだとか。土地は痩せて決して肥沃とは言えず、日照りや冷夏が多い。しかし温泉が良くて、旨い蕎麦が食えると言う。

それならばと勇んで出かけたのは我ながら単純なことであったが、しかしつかるもたぐるも目のない私のことで、校長も流石にそこいらをよく心得ている。

それで見栄を張って言うのではないが、この出張は面白そうだ。東北に新しく出来る学校―といっても、学校の名を変えて移転するだけのことだが―しかも私の勤務先と同じ農学校を視察することになっている。まだ新設の校舎は落成しておらず、生徒らは旧校舎で学んでいるらしいが、新たに発展して行く学校とその内容を知ることは有意義なことと思う。寒い土地の農学校とはどういう風なものなのか、私のいる土地とは土も違えば気候も違おう。とすれば生るものも肥料も違って来る筈。それを実地で目に出来るわけだ。第一行ったことのない場所へ出かけるのは心が弾む。

私は全く見栄ではなく、湯や蕎麦も含めてではあるが、今回の視察に多大な興味を持って北に臨んだ。













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