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青色幻燈

第2章 寒地にて



あかいめだまのさそり
ひろげた鷲のつばさ

歌声は透明な水音に混じって遜色ない。尋常小学校の昔、オルガンの音に合わせて歌ったような懐かしい節の歌は、男の穏やかな歌声に乗ってゆっくりと空に昇って行く。

あをいめだまの小いぬ
ひかりのへびのとぐろ
オリオンは高くうたひ
つゆとしもとをおとす

私は不意にどうして男の後ろ姿が懐かしかったのか気がついて、泣きたいような笑いたいような、可笑しな心持ちになった。

男のコートを羽織った後ろ姿は、不作の年に出稼ぎに出かける父や祖父の背中に似ていたのだ。私が農学校の教師になろうと思った原体験だ。皆で年の瀬を越せますように、良い稲が育てられますように、それにはどうしたらいいか知りたくて、教師になったのだ。
もうずっと、忘れていた。

男はなおも空を見上げたまま、静かに歌い続ける。一体これは何という歌なのか、しかしそれを尋ねて口にするのも煩わしい程、辺りは音楽に満ちていた。

アンドロメダのくもは
さかなのくちのかたち
大ぐまのあしをきたに
五つのばしたところ
小熊のひたひのうへは
そらのめぐりのめあて

星が雪に凍えて、震えながら美しく輝いている。
















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