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青色幻燈

第2章 寒地にて


あれ以来彼とは会っていない。

また会いましょうと言い合って別れた冬の日から、もう十六年経っている。プラットホームで私にトランクを返しながら、今度はそちらに行って丸天饂飩を食べてみたいと、男はあの象の目で笑っていた。

何度か手紙のやりとりをしたが、男はあれから何年かして教師を辞め、とうとう自ら農民になってしまったようだ。
住居を開放して農民たちと直に交わり、土を耕し本を読み、音楽を聴いて…つまり、何だろう。まあ、ひと言で言えば、如何にも彼らしい話だ。

それからどうしていたのかは手紙が途絶えていたのでわからないが、昨日何年かぶりで岩手から便りがあった。差出人は、男の弟だった。

九月二十一日、つまりこの手紙が着く一月程前に、男は結核で永眠していた。最後まで親身になって農民の相談に乗っていたと、手紙はしっかりした丁寧な字で書いてあった。

あの男に、この世で会うことはもう叶わない。

後に私は或る雑誌で男の歌っていたあの懐かしい歌を見つけた。赤い鳥というその雑誌は、子供向けの童話雑誌だ。そこに双子の星という一話があった。

ポンセとチュウゼというあどけない双子の星たちが仲良く歌っていた歌は、星めぐりの歌という。

















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