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第1章 境界上にて邂逅す


瞬時。
瞬きの間に姿は掻き消えていた。たゆたう霧はゆらゆらと晴れて……まるでそこに何も居なかったが如く。


ヒソカはかすかに溜息をこぼして
「いいや♦ これからはずっと逢えるのだし♥」
愉快な悪戯を思いついた子供のような、無邪気な笑みを浮かべる。




……ハンター試験。
数あまたの志望者の内、会場にたどり着けるのはほんの一握り。合格者は……年にわずか数人。
先程「試験官ごっこ」と称して殺戮した者達は、ヒソカから見れば、いっそ哀れを誘うほどに将来性の無い者達だった。これからの試験で彼等が地獄を見る事も無くなったし、試験官の面倒も減らせた。コレも一種の慈善活動、とヒソカは心中で勝手に思う。




だが、
居たのだ。確かに、あの中に。

ヒソカは先程から、一人の男を肩に担いでいた。名をレオリオというらしい。
試験官ごっこの時に偶然居合わせたうちの一人だった。
殺さずに残した数人は、一斉に別々の方向に逃げ出した。賢明な判断だ……と思ったヒソカは、数秒の猶予を与えたのだ。何しろその中には、非常に将来楽しみな者が多かったから。ヒソカはこのような者達を「青い果実」と呼んでいる。

しかし、レオリオは単独で戻ってきた。
やられっぱなしは性に合わない、と殴りかかってきたのだ。

――面白いヤツだ。

その行動は冷静な人間の目で見ればみすみす殺されに戻ったような行動である。
だが、とヒソカは思う。逃げた者達の中で一番弱いと思ったが、これはどう化けるか判らない。
そして彼を助けに来た釣り竿の少年と、逃げたメンバーの中にいた金髪の若者。
それからいち早くヒソカの性質を見抜いていた、銀髪の少年と。

ゾクゾクした。これほどの逸材が揃うとは。去年の試験に落ちていて幸運だったとしか言いようがない。




――彼等なのか。あの人を喚んだのは。
そして、個人的な興味もさることながら、あの人が出てきたということは……。



彼等はきっと気付いていない。彼等が一緒に居る意味も、彼の者がここに存在する、という意味も。



ヒソカは笑う。後ろは振り返らなかった。気配は明らかに、霧の背後の向こう側に迫ってきていた。もうすぐ彼等はこちらの存在に気付く。もはやそこまで迫ってきているのだ。その前に進まなくては。



――上空には太陽。あと一時間で南中する。









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