第19章 加速する輪舞曲
-しん…-
聞こえるのはせせらぎの音と蝉の鳴く声。風で揺れる木の葉の音。所々で魚が水面を跳ねる音。
構えた状態から全く動かないまま数分が経った頃。
-ピチョン…-
桜音の2m先で魚が水面から顔を覗かせるとヒュッと風を斬る音。
-バシッ-
一同「!」
見事に木の枝先が魚に命中し勢い良く此方に飛んで来…
-べちょっ-
「ぶっ!?」
『あ、御免ね真田君』
見事な腕前…
-バタッ-
※※※
『じゃあアタシは昼食の支度があるし掃除もするから皆頑張ってねー』
とひらひらと手を振って颯爽とペンションに戻った智桜姫。凄技を披露したのにそれに驚く間もなくテキパキと流れる様に一足先に帰ってしまった。
「成程なー。無闇に捕まえるんじゃなくて考えて捕まえろって事か」
風船ガムを膨らませながら言う丸井はラケットを持って川に入ると金魚掬いをする容量で魚を獲る。
「どう?天才的?」
そんな感じで川に入ったり岩場で待機したりと各々のやり方で魚を捕獲する。
※※※
-ドサッ-
『わあ!皆凄い!大漁だね!』
ペンションの台所に並べられたバケツには沢山の川魚。大きさも様々。ヤマメにアユ…それになかなか捕獲が珍しいイワナまで。
『んじゃあちゃちゃっと内臓取り出して塩焼きにしようかね!』
「内臓取り出すのか!?」
『川魚は寄生虫の危険があるからね。焼けば問題無いけど念の為、内臓は取り出す』
「手伝う事ある?」
『いいよ、皆ゆっくりしてて。どうせ昼食終わったら大変になると思うし』
一同「………(ゾワッ」
顔を青くする皆を見てちょっとだけ楽しくなる。
※※※
昼食はもう絶品だった。焼き魚にお米と味噌汁、香の物。純和食。栄養を摂った後は夕食の山菜探しを二時間くらいさせられた。急斜面で足場の悪い山を二時間散策したらもう疲労はドッと押し寄せて来て。それでも休む間もなく筋トレ、素振り、交互にマッチングして打ち合い。
終わった後は指一本も動かせないくらいクタクタで。でもこれまた絶品な夕食を食べれば気力も回復。夕飯は捕った魚のムニエルや唐揚げ、山菜を使った和え物やサラダ。智桜姫一人で全部作ってしまうのがもう凄い。