第22章 熱帯夜の再演
踵の高いサンダルを履いてるから身長差が縮まったせいと二人に押されてくっ付いてるせいもあって本当に気絶しそうなくらいの至近距離。
顔中に一気に熱が集中するのが分かった。
『ご、ごめ…!』
-ぎゅうっ-
『っ!?』
急いで離れようとしたら背中に回ってた腕に力が込められて動けなくて思わず硬直してしまう。あ、れ…確かこの展開、合宿の二日目の夜にもあった様な。
『あ、の…』
「………」
『ゆ、幸村く…』
「………智桜姫」
幸村君が浅い深呼吸をしたのが分かった。
「また明日、部活で」
『………』
パッと離れた身体。熱帯夜の蒸した風が涼しく感じる。
あぁ、何でそんなに切ない顔をするんだろう。熱の篭った瞳でアタシを見て困った様に微笑む。苦しい。凄く苦しい。
幸村君には好きな人が居る。だからアタシのこの気持ちは封じ込めなきゃいけないのに。そんな顔されたら期待しちゃうじゃない。ますます気持ちが大きくなってしまうじゃない。
でもアタシはとても臆病だから溢れてしまいそうな気持ちに更に頑丈な施錠をする。それに幸村君は今、とても大事な時期だ。困らせたくない。
『うん、また明日…部活で』
※※※
「………はぁ」
危うく本当にキスしそうになってしまった。
好きな人があんなに至近距離に居て頬を染めて潤んだ瞳で見詰められたら我慢するの本当に大変。耐えた俺自身を褒めてあげたい。
でもまだ告(い)っても無いのにキスするなんて節操無しとか思われたくないし、雰囲気大事にしたいし………
「まだ…告げられない」
大事な全国大会が控えてるし。
告げてどう転んでもモチベーションが変わるのは分かりきってる。だからまだ告げられない。多分智桜姫自身も想ってくれてるからこそ、そう思ってるハズだし。
「じゃないとあんな熱を孕んだ瞳を一瞬で隠せない」
そして八月十七日、日曜日。
全国大会、開幕-…
→To Be Continued.