第19章 加速する輪舞曲
流石に素手で掴んで運ぶには鮮度も落ちるし。川魚は鮮度が命だから…って智桜姫も良く周りみてるし色々知ってるんだなぁ。
「でも何でイキナリ魚を取ってこいなんて言ったんだい?」
『釣竿とか何も無いから手掴みとかになるでしょ?凄く集中しなきゃ難しいし集中しただけじゃ無理だし』
クスクスといたずらっ子の様に笑う。
『走り込みはただのウォーミングアップ。魚取りは集中力の向上と思考力の幅を広げる為のもの』
「………」
凄い。本当に良く考えられてる。
※※※
「…と言うのが狙いだろう」
と桜音の考えを予測する柳は川の中で喚く赤也を見て頭を抱える。
「だーっ!クソ!捕れねぇ!!!」
「意外と難しいもんだなぁ…」
『ははは!やっぱり皆苦労してる!』
一同「!」
「幸村部長!姫先輩!」
仲睦まじそうにやってきた二人は人数分のバケツと虫取り網を持っていた。ん?仲睦まじい…?
「まさかっ「真田」すまん…」
『?』
「気にするな。二人は何故此処へ?」
『捕獲した魚を運ぶ為のバケツ持ってきたの』
「じゃあその網は魚捕獲用か。気が利くきに」
『え?違うよ?』
一同「えっ!?」
『皆は素手で捕獲。この網はアタシ用。だってアタシ素手で捕獲とか気持ち悪くて無理だもん』
あっけからんと言うと靴と靴下を脱ぎ捨てて河原の岩を身軽に飛び越えて行く。そして木陰のある付近で止まると…
-バシャッ-
まるでゴルフをする様に網をスイングさせる。
『よし、捕った』
一同「えぇー…」
『ヤマメか…個人的にはアユが好きなんだけど…』
そう言いながら少し不満そうに戻って来るとバケツに魚を放り込む。
「えー!ズルいっすよ姫先輩!」
『って言われてもアタシは昼食の支度とかあるし魚獲るのに時間かけられないし………まぁ網は簡単だからダメだけど何も道具を使ったらダメって言う訳じゃないんだよ』
一同「?」
『例えばアタシならー…』
ぐるりと河原を見渡すと少し離れた所に落ちてた長めの枝を拾う。すると大胆にもジャージのズボンを脱ぎ(とても焦ったが水着を着用していた)ザブザブと川の中を歩いて行く。腰までの深さのところで止まると居合の構えをして静かに目を閉じる。