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君色Days【庭球王子】

第19章 加速する輪舞曲


まるで何ともない、と彼女自身は思ってるのかも知れないけど俺達みたいに平々凡々と生きてきた人間にはとても理解し難いくらいツラい話で。親は離婚して片親だけ。でもその片親もなかなか帰って来ない…キョーダイの世話して家事してってそれだけでも忙しいのに学校行って部活して俺が入院してる時は頻繁にお見舞いに来てくれて。
どうりで家族の話をすると陰る訳だ。
それでもいつも明るく凛としてる智桜姫が無性に愛しくなる…けどここは皆が見てる前だからグッと耐え続けて数時間…柳のペンションに到着する。基本は山に囲まれ綺麗な川が付近に流れてる。少し歩けば海にも行ける。そんな素敵な場所。



『………』



智桜姫は何かを考え込む様に一通り景色を見渡した後、何か閃いたのかハッと顔を上げると周辺の地図を覗き込む。



『午前中のトレーニングメニュー変えてもいい?』



と微笑する智桜姫に何やら恐ろしいものを感じた。





※※※





トントンとリズム良く刻まれる包丁の音。グツグツと煮える鍋の中から仄かに香る出汁の匂い。Tシャツの袖を肩まで捲り上げ長ジャーの裾はふくらはぎまで捲り上げた上からエプロンを着て広い台所に立つ智桜姫。決して色気のある格好をしてる訳では無いのに好きな人のエプロン姿ってどうしてこんなにも萌えるのか。



-じぃ…-



『え?あの…そんなに見られると集中出来ないんだけど…』

「御免。とても手慣れてるから見入ってたんだ」

『普通だよ』



と小さく笑う。現在ペンション内には俺と智桜姫だけ。他の皆は昼食にする為の魚を川に取りに行っている。しかもただ取りに行くだけじゃ無い。一度ペンションから道がある所までの頂上へ全力疾走してから更に折り返して下流までランニングしてそこで川魚を捕獲する。しかも捕獲出来なかったら昼食はお米と味噌汁と香の物だけになる。



『そろそろ一時間か…川で魚取り出してる頃かな』



そう言うと香の物に重石を乗せて鍋にかけてる火を止めるとエプロンを脱ぐ。



『さてと…じゃあアタシ達も行こうか』

「川へ?」

『うん。多分皆バケツ持って行ってないし』



あ。そう言えば皆走り込み行く時、何も持って行ってなかったかも。確かにバケツが無かったらどうやって魚を運ぶんだって感じだよね。

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