第17章 始まる夏の奏鳴曲
一同「!?」
『ねぇ切原君ってば!』
「あ"ぁん!?」
コートチェンジの際に話しかけて見れば、いつもの切原君じゃない乱暴な返事をされてピクリと片眉が痙攣するのが分かる。落ち着け。アタシが今まで見た試合ではゲーム取られたところなんて見た事無いから多分苛立ってるのだろう。目も真っ赤に充血している。
「よせ桜音!今の赤也に話し掛けるな…」
『水分補給はちゃんとして!』
「ごちゃごちゃ煩ぇんだよ!!!」
ふいにラケットが振り上げられる。
一同「やめろ赤也!!!」
-ガッ-
「っ!?」
一同「!?」
振り下ろされたラケットを受け止めてラケットを引っ張れば体制を崩すからそのまま胸倉を掴む。
『水分補給しろっつってんだよ、聞こえんと?』
一同「………え?」
『それにラケットは殴る道具じゃなかとよ?ボールを打つ道具。そんくらい頭に血ぃ上ってても分かっちょーやろう?』
「…なっ………」
『ほら、水分補給したらとっととコート戻りぃ』
「…あ、はい………」
ぱっと手を離すと勢い良く水を飲み干してコートに戻る。それを見送ってベンチに座ると皆がアタシを囲む。
「姫ケガは!?」
『ナイナイ』
「姫さんそんなキャラじゃったかのぅ?」
『言う事聞かない弟に躾は必要でしょう?』
一同(………怒らせたら一番駄目な子だー!)
※※※
「って事があったのだが…」
「本人から聞いてないのか?」
試合が終わって報告に来てくれた部員の話を聞いて吃驚する。部員が来る前に智桜姫が報告しに来て…いつもなら少し雑談するんだけど今日は家の事があるから、と直ぐ帰ってしまい本当に報告だけだったんだけど、その下りは聞いてない。
「赤也、いくら赤目モードだからって女の子に暴力は有るまじき事だよ」
「すみません!本当にすみません…!」
「俺に謝るんじゃなくて明日学校でちゃんと彼女に謝るんだ」
「はいっす………」
聞いた話では彼女に怪我は無いみたいで大きく胸を撫で下ろす。寧ろ聞く話によると受け止めて胸倉掴んで叱咤したとか。俺も一度、叱咤された経験があるから分かる。普段の智桜姫からは想像も出来ない凄みがある事を。
「んー…それよりさ」