第17章 始まる夏の奏鳴曲
え、どうしよう。ここは素直に喋るべき?でもでも!この気持ちは伝えないって決めてるし。
『ひ、み………』
"秘密"と打とうとした指を止めて消す。
『…親友に隠し事は無し、だよなぁ』
恋話を聞くのは好きだけど恋なんてした事無かったから自分の恋話なんて話した事無いし。だけどきっと…互いの好きな人の事を話し合うのって楽しいんだろうな。
『ふふ』
「お姉ちゃん?」
『ひっ!?』
「寝ないの?」
『………寝るよ』
"今度ゆっくりお話しよう"と返事を送って布団の中に潜り込む。ふと考えるのは幸村君の事。この時間だともう寝てる頃かなー、なんて。
※※※
そして一週間後。関東大会二日目。前回不戦勝だったアタシ達、立海は漸く熱を灯す事が出来る。
『皆ちょっといい?』
一同「?」
コートに入る前にレギュラーに集まって貰って自分なりに発見したポイントを伝える。
『優秀なデータマンの柳君が居るから問題無いだろうけど…先週、偵察してて気付い事があって』
※※※
『って感じでD2D1共にそこに穴がある』
テニスの事は詳しい訳では無い。でも彼女は癖とか弱点を見付けるのが得意で、それによってとても優位に楽に試合を進める事が出来ている。
『んでS3のあの人はー…』
優れた洞察力と観察力。賢くキレる頭。敵に回ってたら厄介だったとつくづく思わされるくらい頼もしい仲間。
『OK?』
一同「OK」
『これで三タテは楽なハズ』
「しっかし良く見てんなーすげーよ」
『ふふーまぁね!たまには役に立たなきゃだし?』
一同「いつも充分過ぎる(っス)」
『!…ありがと』
少し照れ臭そうにはにかんだ。
※※※
関東大会二日目の一回戦。1ゲームも取られる事無く三タテした立海は準決勝進出を決める。そして少し休憩を挟んでの準決勝、不動峰戦。D2D1共にやっぱり1ゲームも取られる事無く勝利を掴んだ。
だけどS3…切原君の試合。相手は不動峰の部長でやっぱりここまで勝ち進んでる実力はあって1ゲーム取られてしまう。
『………』
そして切原君の雰囲気が変わる。いつもの無邪気で明るい感じでは無くて…何か…こう………少し怖い感じ。
『切原君?』