第17章 始まる夏の奏鳴曲
何か気なってる事があるのか、丸井がガムを膨らませながら話を変える。
「あの方言、何処の方言なんだろ?」
「あー…そう言えば聞き慣れない言葉だったな」
「仁王君と少し近い感じでしたね」
方言…?智桜姫、方言なんて喋るんだ。
「博多弁に近かったな」
智桜姫が博多弁…智桜姫の博多弁………どうしよう…想像しただけで物凄く可愛い。あの感じで"何しとっとー?"とか聞かれたら死ねる自信がある。
「む?どうした幸村」
「ん?何でもないよ(キリッ」
※※※
「ほんっとうにすみませんでした!!!」
『ちょ、切原君やめて。顔上げて』
「いいえ!駄目っす!マジですみませんでした!!!」
翌日の放課後の部活動の時間。地面に額を付けて土下座をする切原君に後退る。赤目になると好戦的になって我を忘れてしまうって事を昼休みに真田君と柳君から聞いて二人からも謝罪されたばかり。
「今後気を付けます!努力します!だから…だから嫌いにならないで下さい!!!」
『へ?』
「俺っ…姫先輩に嫌われたら生きていけないっす…」
ぐず…と鼻をすする音と涙声。
『だ、だだだ大丈夫!怒ってないし嫌ってないよ!?』
「ほんとっすか?」
『本当本当!それだけテニスに夢中って事でしょ?寧ろアタシの方こそ胸倉掴んだり乱暴な事して御免ね?』
「姫先輩の愛の鞭!痺れました!」
『え!?あー………』
わ す れ て く だ さ い 。
※※※
「うん、赤也の事は聞いてるよ。本当にすまない」
いつもの様に部活は皆より早めに切り上げて幸村君の入院する病院に顔を出すと昨日の事は聞いてるみたいで幸村君からも謝罪される。トップ3に揃いも揃って謝られるなんてアタシは一体何をしてるんだ。
『そう何度も謝られると心苦しいんだけど』
「嫌われたくない。それだけ君が俺達にとって大事な存在って事だよ」
『え…あっ…』
じわじわと頬に熱が集まる。他意が無いのは分かってるけども。
「智桜姫?」
『なんでもない…』
来週は決勝。そして幸村君の手術日。
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