第17章 始まる夏の奏鳴曲
"元居た学校だし、それなりに仲良くはしてもらってたから"とぽつりぽつりと話し出す。
『初戦敗退しちゃって…』
相手は確か青学だったか。
『泣いてる親友慰めてたら貰い泣きしちゃった』
そんな彼女を見てたら胸がぎゅーって締まって気付いたらその小さな頭に手が伸びていた。
『ゆ!ゆゆゆ、幸村君!?』
-ぽんぽん-
『~っ!い…妹扱いしてるでしょ』
「妹?」
妹かぁ…そうだなぁ…智桜姫が妹だったら執拗いくらい構い倒して甘やかすだろうな。でも彼女は妹って言うよりお姉さんだし…何より智桜姫とは兄妹よりもっと別の…対等で特別な関係でありたい。
「そんな事無いよ。妹とは違う可愛い女の子」
『………ずる、ぃ…』
その声はとても小さくてか細くて、ちゃんと聞こえなかった。でも少し不機嫌そうにしながらも大人しく頭を撫でられてる智桜姫を見てたら、それだけで俺は満足してしまった。
※※※
バフっと枕に顔を埋めて先程の事を思い出すと頬に熱が集中して、この熱帯夜…更に暑くなる。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
『………なんでもない。電気消すよ』
「はーい」
あ…頭ぽんぽんされた…頭撫でられる事なんて無いから嬉しい様な…でも子供扱いされてるんじゃないかと思うと悲しい様な複雑な気持ちになる。でも彼は"妹とは違う可愛い女の子"って言ってくれた。
あの言葉の意味はなんなんだろう?あんな事言われたら期待しちゃう。別に可愛いなんて言われても嬉しく無いけど…好きな人から言われたら舞い上がってしまうに決まってるじゃんか。
『あーダメダメ、期待はノー』
だって彼には好きな人がいるんだから…勘だけど。幸村君はどんな人が好きなんだろう?やっぱり育ち良さそうなお上品で綺麗な人かな。
-ヴーッヴーッ-
『メール?』
差出人は実亞加。
"今日はお疲れ様。泣いちゃって御免ね。来週の試合は応援行くよー!"
ふふ、気ぃ使わなくていいのに。なんて小さく笑ってみると文の下にまだ余白がある事に気付いてスクロールしてみる。
『んー?』
"そう言えば姫が恋してる人ってどんな人?やっぱりテニス部の人?"
って…ここに来て恋話振ってくるの!?