第17章 始まる夏の奏鳴曲
-がばっ-
『ひゃっ!?』
「会いたかったー…めっちゃ会いたかったでー」
『お、忍足君!』
『やめろ変態伊達眼鏡』
「うわ、酷っ」
皆から揉みくちゃにされて忍足君に後ろから抱き着かれて、そしてそれを実亞加が毒舌と共に引き剥がす。本当、変わらない。
「なかなか似合ってるじゃねぇの、立海の制服」
『まぁね』
「不戦勝なんだろ?偵察か?」
『違うよ、応援』
一同「!」
『皆頑張ってね!応援してる』
一同「………(ぶわっ)」
そう言うと皆が目頭を抑える。何故…とか聞こうと思ったけど、もうすぐ試合が始まる。偵察に戻らなきゃ。
『アタシはアタシの仕事があるから見届けられないけど…立海の次に応援してるよ!』
一同「俄然やる気が出て来た」
※※※
「氷帝盛り上がってんなー」
「あの子が来てからテンション上がったにゃー」
「制服が氷帝じゃないけど何処の学校の子だろ?」
「………立海大附属中学校」
一同「!?」
「データが少ないが二年まで氷帝で三年から立海…そしてテニス部のマネージャーらしい」
一同「三年なの!?」
※※※
『って感じで立ち上がりは皆不完全燃焼だったかな』
と肩を竦めながら今日の事を話してくれる。にしても…智桜姫の恰好暑そうだな。袖は捲り上げてるけど長袖ブラウスに…パーカー。
「暑くないのかい?」
『え?暑いよ?』
何当たり前な事聞いてるの?って感じのドヤ顔即答に読んでた本を思わず落としてしまう。せめてパーカーくらいは脱いでもいいのでは無いだろうか。
『暑いけど…アレルギーあるし?』
「アレルギー?」
『紫外線かな?長時間日光に当たってると蕁麻疹出る』
「じゃあこれからの時期とか大変なんじゃ…」
『あー!そんな大した事じゃないの!でも蕁麻疹出ると痒くなるでしょ?痕が残るくらいなら暑いの耐える!みたいな』
パッとおちゃらけて言う彼女の目が少し腫れている事に気付く。
「何かあった?」
『え?』
「少し…目が腫れてる」
『っあー…』
バツが悪そうに頬を掻きながら視線を宙に彷徨わせると、やがて俯いてスカートの裾を握り締める。
『んー…やっぱ氷帝、応援してたんだけどさ』
「うん」