第13章 心の夢想曲
少し智桜姫の事が分からない。叱咤された時もそうだけど次の日は何も無かったようにいつも通り。ポーカーフェイスなのか…それとも自分を隠すのに長けた演技派なのか。どちらにせよ、いつも通りに振舞ってくれるのは有難いけど少しくらい動揺して欲しい。
もっとその目に映して欲しい。その心に入りたい。
『んでここがこうなって…』
目線だけ上げて盗み見ると先程叩いてた頬が少し赤く腫れていた。腫れるって…そんな強い力で叩いたんだろうか。蚊が…って言ってたけど病室に蚊はそんなに入り込まないと思うんだけどな。
『こうなる』
「痛くない?」
『へ?』
「腫れてる」
-すっ-
赤くなった頬に触れてみる。吸い付くような滑らかな肌。
『手加減はしたから大丈夫』
赤く腫れてるし音も凄かったのにアレで手加減してたんだ………じゃなくて。これくらいじゃ動揺はしてくれないみたいだ。
「………強敵だなぁ」
『…?何が?問題?ちゃんと聞いてた?』
「うん。これがこうなるから、ここがこうなって…こうなる」
『…正解』
そう言えば昨日、下敷きにしちゃったけど怪我とかして無い…のかな?
「怪我とかしなかった?」
『怪我?』
「ほら昨日……………?」
と昨日の話をしようとすると彼女の頬がほんのり紅く染まっていく。
『全っっっ然!!!寧ろクッション力無くって何処か痛めてないか気になってたの!!!』
「俺は君のお陰で平気だったけど…」
『そっか!良かった!お互い怪我してないし昨日のは事故だから!』
なるほど。ポーカーフェイスでもあり演技派でもあるのか。こんなに動揺してくれるって事は全く気にしてなかったって理由でも無さそうだ。本当に可愛い。
『だから気にしないで!気にしちゃうと………』
「?」
『気まずくなりたくないから』
あぁだからか。だから彼女はいつも通りに接するのか。仕方ない…これは長期戦を覚悟しておこう。
「分かった。君がそう言うなら」
『有難う』
そのはにかみも反則だから。
※※※
駄目だ。アタシおかしい。変な目で幸村君の事見てる気がするし、ほっぺたに触れられた時の動悸…は辛うじて隠せたけど昨日の話振られて昨日の事思い出したら…もうどうしようも出来なかった。