第13章 心の夢想曲
「うわ、赤也ずりぃ!俺には!?」
『1個しか余って無いんだ…ごめんね』
キョーダイにって思って5個くらい作ってたんだけど、時間余ってたからコーティングに力入れたら、可愛いー!ってクラスの女の子達が持って行っちゃったんだよね。
いやまぁ有難い話なんだけど。
「今度作ったら俺優先な!」
『覚えてたらね』
※※※
『って事があったの』
と智桜姫は楽しそうに話してくれるから、こっちまで楽しくなるし、その光景が思い浮かぶ。場所は屋上。空は少し紫がかっている。
『おっと!じゃあアタシは夕飯の支度あるしお暇するよ。これ、学校のプリントね』
「あぁ、ありが…」
プリントを受け取ろうとベンチから立ち上がろうとしたら急に目眩がする。
「っ!」
『ちょっと幸村君!?』
-どさっ…-
※※※
何だろう。この甘い香りは。頬に当たるこのお餅みたいな柔らかい感触は何だろう。凄く美味しそうだ。
そう言えば目眩がして…そしたら智桜姫の腕が伸びてきて………
「っ!?」
目を開くと小さな鼻とぷっくりとした唇が視界いっぱいに映る。
「あ…れ?」
『ひゃっ!?』
唇を動かせば甲高い声を発して下敷きにしてる小さな身体が震える。待って………この体制は。
-がばっ-
飛び起きると案の定、俺は智桜姫を下敷きにしてて。智桜姫は片手で口元を抑えて、紅く染まった顔をめいっぱい横に背けていた。
「ごめん…」
初めて見かけた時から…その綺麗な目で悲しそうに朝焼けの海を眺める君を見た時から………一目惚れだった。まるで運命なんじゃないかってくらい君は俺の前に現れて距離が近付いて。凛としたその雰囲気も控え目で謙虚な姿勢も優しさと温かみで溢れたその笑顔も…意外と男勝りで口が悪いところも、ただただ純粋な気持ちで恋をしていた。
でも今のこんな表情を見せられて純粋な気持ちのままでいれるハズが無い。
『…へ………き』
絞り出された声はか細くて。
『ちゃんと支えられなくてごめん』
何でこんなに可愛い事言うんだろう。崩れ落ちそうになる理性を奮い立たせて言葉を選ぶ。
「いや…今のは俺が悪かったよ」