第12章 隠れた受難曲
「桜音だけでは大変だろう。俺か柳も一緒しよう」
「んげ…」
「そこは幸村にお願いしよう」
一同「幸村(君/部長)!?」
入院で授業は受けて無いとは言え数学と英語は得意だし…何より智桜姫に教えて貰って大幅に授業に遅れてないと言っていたからな。問題は無いだろう。
『じゃあその方針で。切原君、5時限目終わったら校門前で待ち合わせね』
「はいっス!」
※※※
「はぁ…赤也」
「う…すみません幸村部長」
答案用紙を見て溜息を吐く幸村部長に身構える…けどそれ以上は何も言ってこなかった。いつもだったら字を綺麗に書けとか、スペル間違えすぎだとか色々ダメ出しして来るのに。
『切原君、暗記系だめ?』
「暗記系苦手っす…」
『じゃあ日本語を英訳する問題は捨てよう』
「「えっ!?」」
『追試は明日だし数学もあるから時間が足りない。だからよく出てくる英単語の翻訳をちゃっちゃっと覚えよう』
「確かにそうだな…その方がいいかも知れない」
『じゃあ幸村君は答案用紙の解説してあげて。アタシは急いで要点とかをノートにまとめるから』
そう言うと短い髪の毛を後ろで束ねる。
-じゃら…-
普段隠れてる小さな耳には沢山の金属が刺さってた。
「「………」」
『何?』
「ピアスの量…凄いなって」
『そんな事無いよ。右3つ左2つだから。真田君には内緒ね?彼、風紀委員でしょ?』
なんて悪戯っぽく笑う姫先輩、ホント可愛い。先輩達も言ってたけど弱点も欠点も見当たらない。
※※※
「終わったー…」
と項垂れる後輩を見てると可笑しくて笑ってしまう。赤也にしては凄く頑張ってたし無理も無いか。
「あれ?姫先輩は?」
「赤也が頑張ったご褒美にジュース買ってくるって売店に行ったよ」
「マジっすか!?流石姫先輩…マジ神…いや女神」
本人は無自覚だろうけど…多分赤也は彼女に好意を寄せている。今日見てて何となく、そう感じた。
「真田達も来るって」
「えっ!?まだ17時っすよ!?部活中じゃ…」
「赤也の勉強が気になって部活に集中出来ないんだって」
「えぇー…そんなぁ」
-コンコン-
タイミング良く病室のドアがノックされる。