第11章 心の余興曲
「そう言われると…なんだかヘコむなぁ」
「お前何て事言うんだよ」
「あ、いや…そうゆう意味じゃなくて…」
「部長に謝れ!今すぐ謝れ!」
-わしゃわしゃ-
「ふふ」
「「ん?」」
「ふふふ、嘘だよ」
「脅かさないで下さいよ部長ー」
「ほんとほんと」
-わいわい-
何強がってんのよ馬鹿。
「真田」
「ん?」
「任せたよ」
「…あぁ。我々の力で必ず優勝旗をお前の手に」
※※※
「………」
皆が帰った後も俺は屋上のベンチに座ったままだった。動く気になれなかった。茜色の空も普段なら綺麗だなとか思う筈なのに寧ろその朱い色がやけに憎らしかった。
『やっぱりまだここに居た』
「智桜姫…!?帰ったんじゃ無いのかい?」
『強がりで嘘吐きな部長さんを苛めてやろうと思って』
「酷い言われようだなぁ」
最近、彼女のキャラが少し変わった気がする。失礼な話、見た目は本当に小学生ってくらい幼くて。制服着て無かったらきっと妹と同年代って言っても過言では無いくらい。凛としてる姿は変わらないんだけど優しくて控えめで謙虚で。でも最近は物事はハッキリ言うタイプだし結構辛口。同い年だけど同年代よりもずっと大人思考。
『口が悪いのが取り柄なので』
そう言うとベンチの背もたれの端の方に浅く腰掛ける。
「手術…受けようと思うんだ」
『アタシも少し調べた。あまり成功率は高くないみたいだね』
「うん。でもまたテニスが出来る可能性があるなら」
『そう』
短い相槌なのに酷く安心する。わざわざ調べてくれてたってのが余計に支えになる。
『いんじゃない?それが可能性なら。骨は拾ってあげる』
「有難う」
足元を見ていた視線を空に向ければやっぱり茜色の空。でも先程とは違って綺麗に見える。流れる沈黙も嫌じゃない。彼女は一体どんな表情をしてるのだろうと振り返ろうとしたら屋上の出入口から声が響く。
「みんなー!そろそろ病室に戻りましょうねー!」
「「「はーい」」」
日が落ちてきたから看護婦さんが呼びに来たらしい。
「待って先生!ボールが木の上に乗っかっちゃったんだ!」
「あら本当。でもちょっと高いわね…先生じゃ取れないわ」
「そんな…パパから貰った大事なボールなのに」