第11章 心の余興曲
-すっ-
「智桜姫?」
その様子をじっと見ていた智桜姫がベンチの背もたれに預けていた体重の重心をゆっくりと移動させて今にも泣きそうな坊やのところに向かって歩いて行く。
-ぽん…-
「…?」
『お姉ちゃんが取ってあげる』
「えっ…!?お姉ちゃん先生より小さいのに取れるの?大きい先生でも取れないんだよ?」
『お父さんにもらった大事なボールなんでしょ?』
「うん」
『じゃあお姉ちゃんに任せなさいな』
「…うん」
そう言うと助走を付けて木まで走って行くと速度を落とさず2、3歩くらい木を蹴り上げて登ると一番低い枝に捕まってぶら下がる。すると体操選手みたいにくるりと回転すると枝に綺麗に着地する。
一同「おぉ~!!!」
「すっげー!お姉ちゃん忍者みたい!」
その後は枝を渡って身軽に登るとボールを掴む。だけど降りる時は予想外で。
-たんっ-
一同「!?!?!?」
-すたっ…-
まさかあの高さから飛び降りるとは思ってたなかったから一瞬、肝が冷えたけど怪我なく着地して。頭がいいのは知っていたけどあんなにも運動神経がいいとは思ってなかった。ヒラヒラしていた制服のスカートとかよりも、その身軽さに吃驚した。
『ほら僕ー!行くよー』
「えっ?」
-ぽーん-
とボールを蹴ると綺麗な弧を描いて坊やの胸元に降ってくる。
『大事なボールなんだから、こーやって上手く扱いなさいよ』
「はーい!お姉ちゃん有難う!」
※※※
久しぶりに動いたら何か身体が軽くなった気がした。
「驚いたな。あんなに身軽だったとは思ってなかったよ」
幸村君のその言葉に思わず苦笑いしてしまう。
『母方の実家がかなり厳しくてさ。野蛮な行動は極力謹んでるんだけど実際はゴリゴリの肉体派なんだよね』
「そっか…だからか」
『何が?』
「最近たまに男勝りな一面があるなーって思ってたんだ」
『…悪い?』
「いや…君のそうゆうところに救われてるよ」
『っ!バッカじゃないの?』
そんな恥ずかしいセリフがさらっと出るところとか、そうやって綺麗に笑うところとか…ホント心臓に悪い。
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