第10章 叱咤の対舞曲
『心配しないで。上手くやる』
『あんな連中に智桜姫の事が理解出来るとは思えない』
『そうねぇ…まぁそのうち何で毎日部活でないのかーとか言われるかもだけど、それは仕方ないし』
あぁもう。そうやってまた1人で解決しようとする。私なんかが解決出来ないのは分かってるけど…もっと周りを頼ればいいのに。
『それより二人は試合大丈夫なの?』
「都大会は二軍でやんねん。せやから俺の出番は無しや」
「俺様はS1で出る」
『まあ二軍で余裕だと思うし』
『流石!』
『じゃあ私が注目してる学校見に行こう!教えてあげる』
『有難う!助かるよ。あーちゃん、しん君行くよー』
「「はぁい」」
-パタパタ-
「姫さんがマネージャーか。王者の壁が更に厚く高くなるんちゃう?」
「ハッ!壊し甲斐のある壁じゃねぇの」
※※※
すっかり紫色に染まった空の下を足早に歩く。時刻は18時半。この時間に伺うのは迷惑かな、と思ったけど報告は早めにしておきたくて真っ直ぐと病院へむかう。1度下の子達を家に連れて帰って夕飯の支度は済ませたから家に帰るのは少し遅くなっても大丈夫。
-コンコン-
と病室の扉をノックするけど返事は無い。不躾ながらも扉を開けると部屋の電気も付けず窓から見える輪郭のボヤけた月を眺める幸村君が居た。
『幸村君?』
「っ!?智桜姫!?」
こちらを振り返った幸村君は驚いた顔をしながらもいつもの様に優しい笑顔を向ける。
「こんな時間に珍しいね。どうしたんだい?」
今日の事を知ってて聡い彼のセリフではなかった。いつもの様に、じゃない。笑顔を作ってる。その奥に垣間見える色をアタシは知ってる。アタシもそんな色に囚われてた事があった。暗くて深い絶望の色。
『何かあった?』
「え…うん?何も」
『じゃあ質問を変える。何が、あったの?』
「別に何もn『アタシには言えない事?まぁそりゃそうよね、出会って数ヶ月だし深い話が出来る仲じゃ無いものね』…ちが…」
『何も無い、と言い張るならもっと上手く誤魔化して』
「………!」
※※※
射抜く様に真っ直ぐな瞳に俺は目を逸らす。県大会の報告に来た部員達には気付かれなかったから大丈夫だと思った。