第8章 扉の変奏曲
なんて純粋に笑う彼女は俺の黒い部分なんて知らないんだろうなって思う。清らか過ぎて眩しい。
「そう言えば智桜姫は………?」
『あ、ごめん。何か男子に名前で呼ばれるの慣れなくて』
何、この可愛い生き物。
『うん、で、何?』
「どんな事手伝ってたのかなって」
『あー…親友の?そうだなー…』
うーん、と宙を見て思い出そうとする。
『合宿がある時は料理担当として付き添ってたかなー。後は実亞加が1人で仕事出来るようになるまで、ちょいちょいドリンク作りとか手伝ったりとか差し入れ用意したりとか…基本的には飲食担当してかな』
飲食担当か…彼女料理上手だし適任だな。
『後は筋トレメニューとか作ってあげたかな!あんなスパルタメニュー、よくやってたと思う』
「へぇ…どんなメニューか気になるな」
そう言ってみるとおもむろにノートとペンを取り出してサラサラと書き出す。数分後、何も言わずに俺にノートを差し出した。
「………うわ」
『まぁ氷帝は機械とか充実してるし立海では出来ない事があるかも知れないけど………役に立てそうなら使ってみて。何なら各々に合わせたメニューも考えれるし』
と平然と言ってのけるけど…君って本当に何者なんだろう。
※※※
「きっつぅー!何なんだよぃ、このメニューは」
「急にトレーニングメニュー変えてきたきに」
「真田と柳に何かあったのか!?」
「そんな雰囲気はありませんが…」
「俺…もう無理っす…」
と皆の悲鳴を聞きながら各々のレベルアップした方がいいポイントをノートに書き込む。今日のトレーニングメニューは先日、幸村から手渡されたものを実践している。なかなかのスパルタメニューで幸村も良く考えたものだと思ったら字が幸村のものでは無かった。
「うむ、なかなかこなし甲斐のあるメニューだな」
「そうだな。いいデータが取れた」
幸村曰く彼女…智桜姫が氷帝にいる時にテニス部の手伝いをしている時に考案したメニューらしい。もし彼女が正規のマネージャーをしてたら………氷帝は立海の脅威になっていたかも知れない。
※※※
『今日の授業内容はこんな感じだったかな』
ぱたん、と静かに教科書とノートを閉じて腕時計で時間を確認する。