第6章 引力の行進曲
『それやめてください』
「じゃあ智桜姫先生?」
『っ!?からかわないで下さい』
つん、とそっぽを向くと鞄から教材を取り出して広げる。
『今日の気分は社会。まずは歴史から』
※※※
『はい、今日はここまで』
パタンと音を立てて教科書を閉じると腕時計で時間を確認する。
「こんな短時間であんなに詰めたのに分かりやすかったよ」
『大体出るところってのは決まってるので。歴史だとそれを如何に覚えられるか、って感じですね』
暗記系なので教えるって程でも無いですから、と笑う。
『基本的に数学以外はコツとポイントしか教えられないですけど大丈夫ですか?』
「それだけなのに凄く解り易くて助かるよ。これからも宜しく頼む」
『………ふふ、はい……っと、そう言えば』
「なんだい?」
『立海ってどんなところですか?』
質問の内容が唐突過ぎて暫く思い悩む。
「そうだな…中高一貫だから大きい…とは思うな。文武両道精神だけど運動部は俺達テニス部以外でも好成績出してる部は多いと思うよ」
『へぇー』
「どうしてそんな事を?」
『ちょっと興味があったので』
悪戯っぽく笑うと、くるりと背を向ける。ヒラリと舞い上がったスカートの事は…これも黙っていよう。
『じゃあまた来ます』
-パタン-
「………白と水色のボーダー…」
※※※
長かったテストを終え、廊下に張り出された順位表を見上げる。
「んな…俺様が2位………だと…」
「凄いな…満点やで」
『まぁアタシが本気出せばこんなもんよ』
とは言ったものの幸村君に勉強教えてて、こっちも勉強になったから余裕だったな。
「1年の終わりから2年の半ばまで思いっ切り下がってたじゃねぇか!!」
まぁその時期はゴタゴタがあったし。かと言って2学期盛り返しても精々ギリ1桁入ってたくらいだけど。
「それに比べ実亞加は追試決定やで」
『だぁってえぇ!!いつもなら智桜姫が数学教えてくれるのに今回は忙しいからって全く教えてくれなかったんだもん!』
「本気出せばって…何か本気になるキッカケでもあったん?」
『あー、うん。来週の日曜日に編入試験だから』
『!』
「「編入………試験?」」