第4章 小指の小曲
…と手渡された病院の名前と彼が入院してる病棟と部屋がメモされた紙を手渡される。手元に戻ってきた生徒手帳に挟んで胸ポケットに仕舞う。
「車で来てるのでお送りします」
『いっいえ!大丈夫です!アタシなんかに気を使わないで下さい!お気遣い有難う御座います』
こんな美人親子と一緒に居たら心臓壊れるって、本当に。
因みに病院は…家から遠くはない。
※※※
そして今日は日曜日。学校は休みだし部活なんてしてないし、やる事があるとすれば家事と勉強くらいだ。まぁアタシは家で勉強なんて絶対にしないってゆーか出来ないけど。
「ねぇね、きょーのおやつは?」
「おやつは?」
『今日はフィナンシェ』
「ふぃ…ふぃ………」
「ふぃなん!」
脚に纒わり付く下の子達を椅子に座らせてオーブンを覗く。
「これ、10時のオヤツと15時のオヤツ?…だとしたら少ないけど…どっちかだけのオヤツにしては多い様な…」
『え!?えー…そ、かな?』
「怪しい」
「うん、怪しい」
小学生である次女と三女はませていて、じっとアタシをみつめる。
「何処か出掛けるの?」
『えっ!?』
「だって今日、ジャージじゃない」
『………うん、昼過ぎに出て夕方には戻って来るからイイ子にお留守番してて』
軽く頭を撫でると小さく頷いた。因みに10時のオヤツはパンケーキと伝えると小走りで部屋に向かって宿題を早く終わらせようと一生懸命になっていた。
※※※
『えーと…』
病院の受付付近にある大きな見取図の前で立ち止まる。メモと見取図を交互に見ながら場所を確認して見舞い品の花を抱え直す。
『あー…でも迷惑じゃないのかな…入院って事はやっぱ悪いんだろうし。あぁは言われたものの…』
「どうしたの?」
『え?えーと…お見舞い、なんですけど…場所がイマイチってゆーか行っても良いものかどうか…』
「嬉しいものだと思うよ。特に君みたいな可愛い子にお見舞いに来てもらったら」
『え?』
と顔を上げると優しく微笑む本人がいて。
『ぅええ!?ゆっ…幸村君!?』
「…あれ?俺の名前知ってるんだ?」
あ、やらかした。