第22章 熱帯夜の再演
小さい物とかは正直狙い落とせる自信が無い。
「ねぇ夏葉!あの景品の中で智桜姫さん何を取ったら喜んでくれるかな?」
「お姉ちゃんが喜ぶもの…?うーん…」
妹達の会話を背中で聞きながら自分でも何を狙うか考えてたら、ふと銃口を縛るヘアゴムに目が行く。普段はピアスを隠す為に髪の毛を結わえる事は無いみたいだけど景品になってるシュシュくらいなら邪魔にはならないだろうし普段使いも可能かな、なんて思う。
「あ、あのキャラクターもののシャーペンとか。お姉ちゃん、あのキャラクター好きだし。それかその隣のシュシュとかかな。家ではいつも髪の毛結んでるし」
「えぇ!?智桜姫さんポ〇モ〇好きなの!?意外!」
「うん。ゲームとか超ガチ勢だよ」
じゃあどちらかに当たれば、って事で。
-ガチャン-
-スッカーン-
「ありゃぁ…」
「もう!お兄ちゃん下手っぴ!」
-バンッ-
「ぅおっ!?」
「おじさん、コルク五個追加で」
「ま…まいどあり………」
※※※
『はぁ…』
10分も長々とお説教を受けてしまった。いやまぁ…こんな時間まで遊んでるって言えばそりゃ怒られるわな。
幸村君達、もうとっくに射的終わってるだろうし何処か別の所にいるかも知れないから電話かけた方が…
-ガサッ-
「あ!お姉ちゃん戻ってきた!」
「お帰り智桜姫。随分と遅かったね」
『あ、うん、ごめん………ってゆーかまだ射的してたの?』
「ちょっと遊び心に火が付いちゃってね」
なんてニッコリと穏やかな笑みを浮かべる幸村君。
夏葉は困った様に笑ってるし聖菜ちゃんは呆れた様に幸村君を一瞥している。アタシが電話で場を離れてる間に何かあったんだろうか。
『そっ…か。これ以上遅くなると皆が心配するし帰ろっか』
「そうだね。もう20時半手前だ」
そうしてアタシ達、兄と姉は妹達の荷物持ちをして。妹達はぬいぐるみを抱えながら手を繋いで歩く様子を後ろで見守る。
「今日は有難う」
『ううん、こちらこそ。お邪魔させてもらって有難う』
「また遊びにおいでよ。皆、喜ぶからさ」
『そう言って貰えると嬉しい』
「そ、れと…」
ピタリと幸村君が歩みを止めたからアタシも同じ様に歩みを止める。