第22章 熱帯夜の再演
『じゃあまずは聖菜ちゃんのウサギさんのぬいぐるみ』
-ポスンッ-
「わあ!智桜姫さん凄い!」
『んじゃお次は夏葉のワンコのぬいぐるみ』
-ポスンッ-
「さっすがお姉ちゃん!」
「あわわわわ…」
妹達の欲しい景品を次々獲得していく様子に射的屋のおじさんは青ざめる。ズルい商売をしてる、って言ってたけど一体何をしてるんだろう。智桜姫はただ銃口付近にキツくヘアゴムを結び付けただけなのに。
『あと二発残ってるけど…幸村君何か欲しい物ある?』
「特には…って感じだけど………」
『あ、ズルい商売の話?』
狙う景品を決めあぐねているのか銃口をさ迷わせながらチラリと俺を見ると指先で銃口をつつく。
『ここ、ネジが緩んでてね。引金引く時に空気が抜け出て威力が出ないから景品が倒れなかったんだと思う』
「成程…って言うか本当に君って凄いよね」
普通の中学生はそんな知識持ってないと思う。
※※※
スコン…と智桜姫が狙ったスチール缶が落ちる。
何であんな知識があるんだろうとか考えてたら智桜姫が何を狙って落としたのか全然見てなかった。
『後一回か………うーん…』
-ヴヴヴ-
『うわ!ヤバ!叔母から電話だ!ちょっと幸村君、後一回やっといて!』
「ちょ、智桜姫!?」
と慌てて携帯を耳に当てながら茂みに入って行く。
やっておいてって言われても射的なんてやった事無いんだけど。
「お兄ちゃん!これはチャンスよ!」
「チャンス?」
「名付けてプレゼント大作戦!智桜姫さんに景品をプレゼントして智桜姫さんの心もゲッチュー作戦!」
「え?お姉ちゃん?」
「わー!ちょっと聖菜!!!」
声高らかに不思議な作戦を言う聖菜の口を慌てて塞ぐと夏葉ちゃんが不思議そうに首を傾げる。
そっか…プレゼントか。クリスマスとか誕生日を祝うプレゼントとしては心もとないけど日頃の感謝を込めたプレゼントとするなら有り、かな。
「取れるか分からないけど…」
「もう!お兄ちゃんしっかり!」
とバシバシと聖菜に背中を叩かれる。
さて。取り敢えず何を狙おうか。置物とかは邪魔になったらいけないし…