第22章 熱帯夜の再演
「これ…今日、と言うより日頃のお礼………と言っても射的の景品だけど」
『………』
差し出された袋を受け取って中身を見るとシュシュとキャラクターもののシャーペンが入っていた。
遊び心に火が付いた、と言うのはこう言う事だったんだ。アタシなんかの為にわざわざ、その気持ちが胸を暖かく擽る。
『ふふふ、考える事は同じだね』
「え」
※※※
『同じく射的の景品だけど、今日と日頃のお礼』
「これ…」
このスチール缶。智桜姫が電話で場を離れる寸前に取ったもの。テニスボールが入ってたのか。
『メーカーとか詳しくないし景品だから大した物じゃないと思うけどあって困る物でも無いでしょ?』
「うん、有難う」
『こちらこそ有難う』
そう言ってはにかむ姿がとっても可愛くて衝動に任せて告(い)ってしまいたいけど、生憎ここは道端だし妹も居………る………
「「………(じーっ」」
『「!?」』
「ちゅーしないの?」
『「は!?」』
「ここは普通キスシーンだよね?」
「うんうん」
『き、ききき!?』
「あ、あのね聖菜!そもそも俺達はまだ付き合ってすら…」
『ま、だ…?え?』
「あ、いやこれはその…」
何で小学生の二人がこんなにもませてるんだ。智桜姫だって色恋沙汰には疎いのに肝心なところはズバッと突っ込んで来るし!
「んもう焦れったいなぁ」
「ほーんと焦れったい」
-ドンッ-
『きゃっ!?』「わっ!?」
聖菜が俺を。夏葉ちゃんが智桜姫を。
くっつける様に押して道端なのに抱き合う様になってしまう。
「先に帰ってるね、お兄ちゃん」
「あたしも。じゃあ聖菜、次は一緒に夏休みの宿題しようね」
「うん!」
-パタパタ-
『あ、ちょ!待ちなさい夏葉!!!』
※※※
『もう、夏葉ったら…』
一体何処であんな言葉を覚えたのかしら。最近の小学生ってちょっとませ過ぎなんじゃ…と思案しながら思い出す様に気付く。
『あ、ああああの!ごごご御免なさっ………!』
「!」
幸村君に謝ろうと顔を上げたら鼻先が触れそうなくらいの超至近距離に幸村君が居て。いつもなら見上げてもアタシの背が小さいからこんなに至近距離にならないのに。