第22章 熱帯夜の再演
アタシ達を見るなり下駄の音を立てて駆け寄ってくると、ぷりぷりと文句を垂れる。
「聞いてよ!射的のオジサン酷いの!」
「ちゃんと当たったのに景品が倒れてないって言って景品くれなかったんだよ!」
「私達だけじゃなくて他の人も!あんなの詐欺だよ!」
『「………」』
不機嫌そうに頬を膨らませる二人を見て幸村君と顔を見合わせながら肩を竦める。
ふと腕時計を確認したら20時前。もうすぐでお祭りはお開きになる。
「「欲しいぬいぐるみがあったのに………」」
『ふむ。じゃあアタシが取ってあげよう』
「「えっ!?」」
「智桜姫!?」
『大丈夫大丈夫!任せて!』
※※※
『成程…ワンプレイ5発分で300円。置いてる景品もガラクタじゃ無さそうだね』
これは景品も良い割にリーズナブルだし皆やりたがる、と観察する智桜姫の目はまるで悪事を暴く探偵の様。
『見たところ景品が動かない様に細工はしてなさそうだから…コルクか銃に仕掛けあり、って感じかな。OK、おじさんワンプレイ分!』
「毎度…って!?さっき店で喚いた嬢ちゃん達!?」
『二人がどうしてもぬいぐるみが欲しいみたいだから』
「お、おう………」
聖菜と夏葉ちゃんを見てタジタジになりながら智桜姫に銃と弾の代わりのコルクを五つ渡す。
それを受け取った智桜姫はコルクを詰めながら銃口を見て、ふと動きを止める。
『………』
-ガチャン-
「「え?」」
「「???」」
-スコンっ-
「あだっ!?」
『あっ!?おじさん御免なさい!やっぱり扱い難しいなぁ…』
なーんて可愛く言って偶然を装ってるけど今のは確実にワザとだった。だって目が笑ってないし。にしても偶然を装いながらきっちりおじさんの額にコルクを当てるなんて。
「いやいや構わないよ!でも空振り分のサービスは『大丈夫、いらないよ』………」
『取り敢えず欲しいのはぬいぐるみ二つだけだし………おじさんがズルい商売してるのはよーく分かったから』
「!?!?!?」
悪い笑顔を浮かべる智桜姫はおじさんにしか聞こえないくらいの声量で言うと無造作に結わえてたヘアゴムを外すと銃口付近にキツく結び付けてコルクを詰める。