第22章 熱帯夜の再演
時刻は19時半になり空も暗くなってきて、そろそろ妹達のお迎えも行こうって事になり二人で家を出る。
「待って精市」
「?」
ちょいちょい、と母さんから手招きされて近付くと肩を掴まれて"あまりモタモタしてると智桜姫ちゃん他の人に取られちゃうわよ!"と耳打ちされる。
「そ、そんなの分かってるよ…」
「ふふふ、行ってらっしゃい」
本当に分かってるし、自分でも少し焦りはある。智桜姫が凄くモテるのは部活に合流してから嫌という程理解したし夏休み終わって二学期が始まれば更に嫌という程理解する事になるだろう。部員の話を聞いてたら結構、告白…されてるみたいだし。
でも智桜姫にちゃんと告白するなら雰囲気とかも大事にしたいし。
『幸村君?大丈夫?』
「うん、大丈夫。行こっか」
※※※
『ゆ、幸村君!』
「ん?どうしたの?」
どうしたの、じゃ無くて。
互いの妹達を迎えに行く為に幸村君の家を一緒に出れば、ごく自然に手を繋がれて。これが一体何か意味するものなのか少し考え込んだけど何も分からなくて。夜とは言ってもお祭りから帰る人達も居るし、もし学校の人達に見られでもしたらスグ噂になって幸村君に迷惑がかかるんじゃないかと思って意を決して声をかければ普段と何も変わらない優しい笑顔に穏やかな声色。
『あ、の…手………』
「あぁ…暗いし踵の高いサンダルじゃ夜道は危ないだろ?」
『え!?あ、うん。そうだね?』
なんだ、アタシに気を使ってくれてるんだ…って思ったらちょっと悲しい様な嬉しい様な複雑な気持ちがグルグルする。ってアタシ、なんで悲しくなってんの。気を使ってくれるとか凄く嬉しい事なのに…これじゃあまるで別の言葉を期待してたみたいじゃん。
「………、」
-するっ…ぎゅっ-
『っ!?』
手の繋ぎ方が変えられる。
指と指を絡める…所謂、恋人繋ぎ。
『ゆ「勘違いして欲しくないから言うけど」…え?』
「智桜姫は同い年にしては見た目が凄く幼いし小さいし目が離せないけど………俺は君を妹扱いしてる訳じゃないし、するつもりも無いよ」
ポツリと前を見ながら言う隣を歩く幸村君を見上げれば、ほんのりと頬が赤くなってる様に見えた。
『………』