第22章 熱帯夜の再演
『ご馳走様でした。とっても美味しかったです』
「うふふ、お粗末様でした。お口に合って良かったわ」
時刻は19時過ぎ。
幸村君のお家で美味しい夕飯をご馳走になって更にはケーキとかスペシャルなデザートまで付いてきて幸せな満腹感に包まれる。
かと言って人様の家でダラける訳にはいかないので片付けくらいは手伝わせてもらう。
-カチャカチャ-
「お客様に片付けさせてしまうなんて…御免なさいね?」
『いえ!お構いなく!せめてこれくらいは手伝わせて下さい』
「ふふふ、智桜姫ちゃんは良い子ね。随分と手馴れてるけど普段からお母様のお手伝いとかしてるの?」
『えっと…』
自分の家族を思い出して一瞬だけ口篭る。
そもそも母親がキッチンに立つ事なんて三、四年くらい見てない気がする。
『まぁ…はい。そんなところです』
「………、そう言えば智桜姫ちゃんってどんな子が好みなの?」
『………え?』
突飛押しもない質問に思わずお皿を落としそうになって、慌てて平静を保つ為に自分の足を自分で踏み付ける。
『いっ…と…こ、好みって食べ物とかじゃなくてですか!?』
「うん。あ、もしかして好きな子とかいる?」
-どっきーん!-
す!すすすす、好きな人!?
お、おおおおお落ち着けアタっアタシ!
多分他意は無い。普通に女子中学生の恋愛模様に興味あるだけなハズ。
『え、えと…あっアタシ…私!れれ、恋愛とかした事無くて…』
「うんうん」
『でも…あの…儚げ美人なのに真っ直ぐで意思が強くて…部活してる時はストイックで貫禄あって格好良いのに凄く優しくて…す、素敵だなとか思ってるんですけど………今は凄く大事な時期ですし…そ、それに…』
「それに?」
『………ゆ、幸村君、凄くモテるから……………あっ!』
「まぁ!」
※※※
キッチンで母さんと片付けをしてる智桜姫は焦ったり困ったり照れたり、くるくると表情を変えていた。どんな話をしてるか気になったけど変わる表情を見てたら、やっぱり可愛いなぁって満足してしまって会話を聞き取る事は出来なかった。
『ではお邪魔しました』
「また遊びに来てね、智桜姫ちゃん」