第21章 隔靴搔痒の練習曲
そんな几帳面な智桜姫の私服は七分丈のダメージジーンズに袖がレースになった淡いピンクのカットソー。足には赤いペディキュアが塗ってあった。
「御免ね、妹が世話になっちゃって」
『ううん、やってるこっちはとても楽しかったし』
髪の毛長いの羨ましいなーとボヤく。
「伸ばさないの?」
『餓鬼は色気付くな、がウチの家訓』
「髪の毛の長いと色気なの?」
『らしいよ。だから今まで肩より下に髪の毛伸ばした事無い』
「智桜姫は長い髪の毛も似合うと思うよ」
『!』
そう言ってみると智桜姫の頬が桃色に染まる。ちょっと待って。今の言葉で照れるの?嘘だろ。可愛…
「お兄ちゃーん!お母さんが呼んでるよー」
-ずるっ…-
何でこう…邪魔が入るのかな!?
※※※
「「行ってきまーす」」
『「「行ってらっしゃい」」』
カランコロンと下駄の音を鳴らしながら嬉嬉としてお祭りに行く可愛い妹達を幸村君と幸村君のお母さんと見送る。時刻は17時過ぎ。
『ではアタシもそろそろお暇…』
「え!?もう帰っちゃうの!?お夕飯食べてもらおうと思ったのに…」
「ちょっと母さん!」
『あ…えっと…』
あんまりお邪魔するのは良くない気がするけど…でもそんなに残念そうな顔されると………一応ウチの夕飯は作り置きしてるから…す、少しくらいなら良いだろうか。
『じゃあ…あの、もう少しだけお邪魔します』
「本当!?良かったぁ腕によりを掛けて作るわ~」
るんるんしながらリビングに戻って行く。
「なんか御免…」
『ううん、大丈夫。手伝った方がいいかな?』
「お客様なんだからゆっくりして」
と言われてもじっとしとく事が出来ないんだよなぁ…何かしないと落ち着かないんだよ本当に。特に今日は!だって好きな人の家に上がり込んでるんだよ!?緊張しかしないって。
※※※
『トーナメント表?』
「うん。帰ってくる途中で真田と柳に会ったから貰ってきたんだ」
『へぇ…』
と興味深くトーナメント表を覗き込む。
場所はリビング。別に俺の部屋でも良かったんだけど密室で好きな人と二人っきりって危険だろ?最近、本当に智桜姫が可愛過ぎて自制が効かない自信がある。