第21章 隔靴搔痒の練習曲
実亞加からの連絡で慌てて跡部を探すと既に人気の無いテニスコートで真田君と打ち合っていた。どうして打ち合っているのか分からないけど、幸村君は何かを感じて止めに入ったのだろう。
高らかに笑いながら去ろうとする跡部にイラつきを感じて飛び蹴りをかます。
『待てやボンボン』
「ぶっ!?」
「智桜姫!?」「桜音!?」
「ってー…お前相変わらず実亞加が居ないと俺様に酷いじゃねぇの、アーン?」
『だってアタシ、アンタの事嫌いだもん』
実亞加の心奪いやがってこんちくしょう。かなりズレてるけどいい人なのは知ってる。でもアタシの実亞加を奪うのは許さん。嫌い。でも流石にこんな扱いしたら実亞加が悲しむから実亞加の前ではこんな事しない。
「そこまでハッキリ言われると流石の俺様も傷付くぜ…」
『知らんわそんなん。つーか行先くらい部員に伝えろや』
「いや、それは…」
『ほう…アタシの嫁に心配かけるってのかい?』
「………悪かった」
『じゃあさっさと帰んな。んでもう二度と来んな』
シッシッと追い払って一息付くと穴を開けそうな程、凝視して来る幸村君と真田君。真田君に至っては顔中冷や汗だらけで幸村君は笑いを堪えるように肩を震わせる。
『あ、嫁って実亞加の事ね?』
誤解がない様に一応言っておく。あれ?コレって弁解にならない?
※※※
そして本日は八月の十四日。
全国大会の組み合わせを決める日であり、お祭りの日。幸村君の自宅にお邪魔する日。
幸村君は通院の日だから抽選は真田君と柳君が行ってる。他の皆は自主練をしてるとの事。そしてアタシは妹の夏葉の手を引いてー。
「いらっしゃい!夏葉!智桜姫さん!」
「今日は娘がお世話になります」
『いえ!こちらこそお邪魔さてもらってすみません』
「いいのよ。こっちが呼んだんだから」
さぁどうぞ、とスリッパを出してくれる。にしても家広っ!どうやったらこんなに広い家が建つのか。一体どんな仕事をすればこんなに立派な家が建つのか。
「智桜姫さん、こっちこっち」
と聖菜ちゃんに手を引っ張られる。始めはあんなに人見知りだったのに慣れてくれたのか積極的に近付いてくれる。意外と天真爛漫なのかなって。