第3章 悪夢の挽歌
昼休憩に仲の良い部員で屋上に集まって昼食を広げたところに早朝、彼女から手渡されたタッパに詰まったクッキーを開ける。
「俺じゃなくて…」
「氷帝の子か?」
「うん。先日のお礼だから皆で食べてくれって」
「めっちゃイイ人…!」
「んまー!」
あの子が悪い子な訳無いじゃないか。と思いながら1口クッキーをかじる。
-さくっ-
珍しい。巨峰味だ。うん、凄く美味しい。
※※※
『えぇ!?今日のオヤツ無しぃ!?』
『ごめんごめん、家に忘れてきちゃって』
『むぅー…ぶどうのクッキー楽しみにしてたのに…あ、でもクッキーだから明日でも大丈夫だよね?』
『んー、家にオヤツ置いてて残ってると思う?』
『いや、無いな』
嘘を付くのは心苦しいけど…ごめんね、実亞加………と心の中で謝ってると鋭い視線に気付いて睨み返す。
『何?』
「お前ホント演技派だな。眼力使わないと分からねぇぜ」
『パンピ相手にテニスの技使ってんじゃないっての』
『え?何何?テニス?』
『何でもない。つーか実亞加はこんなナルシストの何処が好きなわけ?』
こんな奴に恋する理由がアタシには理解出来ない。
『私の親友に恋してるところ』
「『んなっ!?』」
一同「…!?」
『だって智桜姫の事を好きって事は見る目あるって事だし?それだけじゃないよ?俺様のくせに結構回りに気を使ってるトコとか、さり気なく優しいところとか』
『あ…あのねぇ』
『でも智桜姫が跡部に振り向く事は絶対に無い』
「くっ…(がーん」
『だって智桜姫の一番はキョーダイと私だもん。余程のイイ男じゃないと無理でしょ』
一同(確かに)
『智桜姫は跡部にあげない』
世間一般から見ると身内同士の三角関係なんて拗れて当たり前なのに…実亞加のこーゆー正直な所、本当に好きだなぁ。
『智桜姫は私の王子様で旦那様だもの』
『ふふふ、気が向いたら性転換でもしようかな』
『それは駄目!ライバル増えちゃう!』
「せやなぁ…俺としても姫さんは女の子で居て欲しいなぁ」
何て言いながら中庭で笑い合う。でもアタシの胸は痛い。
後どれだけの時間…こうして皆と笑って居られるだろうか。