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君色Days【庭球王子】

第3章 悪夢の挽歌


数日後。早朝の電車で俺と彼女は鉢合わせた。



「『あ…』」



ヘッドホンを外して俺を見上げたかと思うと俯いてしまってスクールバッグを握り締める。



(ホント可愛いな)

『あの…こないだは…ありがと、御座いました』

「ふふふ、隣…いい?」

『…どうぞ』



あの時はアレだけ正義感強く啖呵切ってたのに…もしかして人見知りなのかな?



『早い、ですね』

「うん。朝練なんだ」

『そうですか』



スクールバッグを握り締める丸くて小さくて、まるで赤ちゃんみたいな手。女の子の手って感じで本当に可愛い。と思いながらも彼女がどんな表情をしてるのか気になって視線を上に上げる。



-バチッ-



「っ!?」



凄く見られてた…!睫毛長いし目大きいし吸い込まれそうなくらい透き通ってる。速くなる鼓動を無理矢理押さえ付けて精一杯の平常心を装って彼女との会話を探す。



「えっ…と…」

『あ、ごめんなさい。見れば見る程儚げ男子だなって』

「ふふ、何?それ」



あまりにも突飛押しも無い事を言うから緊張が溶けていく。



「帰りはいつもあの時間なの?」

『いえ、もう少し早いんですけど晩御飯の献立考えてたら3本くらい電車見送っちゃって』

「晩御飯?」

『お…親、忙しいから家事全般はしなくちゃいけなくて』



………陰った。無理した笑顔貼り付けてるけど…色々複雑そうだな。あまり深くは聞かない方が良さそうだ。



「得意料理は?」

『和食…かな?後は…下の子たちが好きなオムライスとかハンバーグとか…』

「凄いな!料理上手なんだね!」

『いえ…』



-次は〇〇駅、〇〇駅。お出口はー…



『あ、乗り換えなくちゃ!』



と立ち上がると鞄を漁り出す。



『先日のお礼です!皆さんで召し上がって下さい!』

「え!?」

『多分不味くは無いと思うので!!!』

「あ!ちょ…」



少し大きめのタッパの中身はカラフルで美味しそうなクッキーがギッシリ入っていた。包装紙とかじゃなくてタッパか…



「面白い子だなぁ」





※※※





「ゆっ…幸村部長が差し入れ…!?」

「ふんふん。甘くて美味しそうな匂いがする」

「タッパ…お手製なのか?」

「しかも手作りっすか!?」
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