第21章 隔靴搔痒の練習曲
告(い)って言い訳無いじゃん。自惚れるのも大概にしろって話よね。
「智桜姫?」
『っ!?!?』
不意に聞こえる好きな人の声にお盆を落としそうになるけど、かろうじて耐えて平静を装う。
「大丈夫?片付け手伝うよ?」
『問題無いよ?先に休んで。明日もハードだし』
「じゃあお言葉に甘えて。おやすみ智桜姫」
『うん、おやすみ幸村君』
パタン…と閉まる扉。遠ざかる足音を確認して盛大に溜息を吐く。二日続けて好きな人からの"おやすみ"って何。アタシそろそろ死ぬのかな?
※※※
合宿最終日は朝食摂った後、各々荷物を纏めてから試合形式でひたすら打ち合い。そしてアタシはひたすら掃除と片付け。昼過ぎには迎えのバスが来るからそれまでにはちゃんとペンションを綺麗にしておかねばならない。
『風呂場OK、リビングOK、ベランダOK、寝室OK』
台所OK、玄関OK。我ながら完璧な掃除力。そう言えば家は大丈夫だろうか?叔母が居るからしっちゃかめっちゃかにはなってないだろうけど…片付け出来ない子達だもんな。
「姫せんぱーい!バス来たっすよー!」
『はーい』
しっかり戸締りをして鍵を柳君に渡すと"使用前以上に綺麗にしてもらって申し訳無い"と言われたけど、こんな素敵な所にタダで宿泊出来たんだもん。強化合宿とは言えど感謝しなくては。
『また皆で来れたら良いなぁ』
一同「………うん!(ホッコリ」
※※※
道路を走るバスの揺れは眠気を誘う。合宿での疲れもあるせいか多分一瞬で皆寝てしまったんだろう。そんな俺達を起こしてくれたのは智桜姫で起きた時にはもう既に学校に到着していた。学校から家に帰る途中まで智桜姫と方向が同じだから昨夜の話の続きをしたいなーって思ってたんだけど生憎、叔母さんが迎えに来てて一緒には帰れなくてモヤモヤしたまま帰宅した。
「ただいま」
「お帰り。どうだった?合宿」
「有意義だったよ」
出迎えてくれたのは母。いつもなら真っ先に妹が駆け寄ってくるのに…と思いながらリビングに入ると楽しそうに電話をする妹の声が聞こえる。
「ええっ!?本当に!?」
どんな会話をしているのだろうか、とっても嬉しそうだ。そもそも電話の相手は誰だろう。