第21章 隔靴搔痒の練習曲
月明かりと星の輝きに照らされた笑顔が綺麗で。だけど消えてしまいそうな程儚くて、それがとても苦しくて。消えて欲しくないと腕を伸ばす。
-ぎゅっ-
『ちょ、幸む「智桜姫はズルい」…え?』
「ズルいよ本当…胸が苦しくてどうかなりそうだ」
『っ…』
その言葉の意味をどう解釈したのかは分からないけど息を呑む様な声にならない声が聞こえた。寧ろどう解釈してくれてもいい。都合良い様に解釈して欲しい。
『それは…アタシの台詞だから』
「っ…」
今度は俺が息を呑む番だった。その言葉の真意が分からなくて知りたくて密着していた身体を少し離して智桜姫を見ると俯いてて。髪の毛の隙間から見える頬はこの僅かな明かりからでも分かるくらい紅く染まっていて。
もしかして彼女も俺と同じ気持ちなのではないかと口を開こうとしたらー…
-ガッシャーン-
『「っ!?」』
一階から聞こえてきた大きな音に邪魔される。
『あー………』
「はぁ…」
『行こうか』
「そうだね」
邪魔した奴誰だよ。
※※※
大きな音がした一階に降りる。幸村君が皆はリビングでトランプしてるって言ってたから恐らくそこで何かあったのだろうと向かうと地獄絵図。
まるで未成年飲酒でもしたんじゃないかってくらい。
『ちょっとコレ何があったの…』
「罰ゲームを設けてコレを飲んで貰ったのだが…」
何がマズかったのだろうと首を捻る柳君と屍になってる皆。そのコレと言う飲み物を見ると普通の色。匂いも普通。口に含むと…
『ぶーっ!?』
「智桜姫!?」
『何コレ毒!?』
「毒では無い。ちゃんと健康を考慮して…」
『毒だよコレは!』
と突っ込みを入れて幸村君と生き残ってる柳君に皆を寝室に運ぶように指示してアタシはリビングを片付ける。
『本当にもー!』
世話のかかる連中。もしこの騒動が無かったらアタシは幸村君とどうなってたんだろう。幸村君に好きな人が居るのは何となく気付いてる…でもあの言葉の意味は…何だったんだろう?まるでアタシの事を………んでもってアタシも流れに乗って…
-ぼっ-
あー駄目駄目、とてつもなくモテる幸村君だからね。アタシ何かが…
『アタシ何かが…』