第20章 青春の八重奏
『体調は大丈夫?』
「好調だよ。智桜姫は?俺達のサポート全部一人でやってるけど疲れてない?」
『全然!楽しいよ』
あ、ほら。こんなに可愛く笑ってる。
-ジジジッ-
『ひゃっ!?』
-ガバッ-
「!?」
『ごめ…蝉が…』
そうだった。怖いもの知らず感が強いけど虫が苦手って言う女の子らしいところもちゃんとある。こうやって引っ付いてもらえるのは役得だけどツラいなぁ…かと言って離れられるのは勿体無いし。
-ぎゅっ-
『!?あの!幸村君!?』
「こうしてれば怖くないでしょ」
『~っ!』
だからその柔らかい手を握った。
※※※
買い物に行く道中に繋いだ手は、まるで磁気の強力な磁石みたいに買い物中も買い物から帰る道中も繋いだままだった。気温の暑さとお互いの体温で汗ばんでも不快感は無く離れる事は無かったけど流石にペンションに着く前には自然と離れてしまって温もりを無くした右手は、こんなに暑い時期なのに寒く感じた気がする。
『これは…』
ペンションに到着すると河原に持って行く荷物が玄関に纏めてあった。そんなに長い時間買い物してたんだろうか?
「二人共お帰り。もう練習切り上げ始めてるぜ」
「そっか…すまない遅くなって」
『じゃあこれ、もう河原に運んだ方がいい?』
「おう、頼むぜ」
「あ!待って下さい俺も行くっす!」
「俺も手伝おう」
「俺達も片付け終わったらすぐ行く」
『OK、じゃあ準備もしとくね』
とペンションを出るのは幸村君、真田君、切原君、アタシの四名。各々、荷物を持って河原へ向かう。何だろう?仁王君もそうだったけど玄関で出迎えてくれた桑原君も少し様子が変だった。
『「何か隠してる?…あ」』
「「っ!?(ドキッ」」
幸村君と被った。って事は幸村君も何か変だと感じたのだろう………にしても。この二人は分かりやすいなぁ。
『陽動作戦にしては人選ミスだよね』
「何せ馬鹿正直と素直だからね。仕方無いよ」
「………」
※※※
赤也の様子が変だ。何が変と聞かれると少し難しいのだが。
『お肉焼けたよー!誰か食べ…』
「俺が食べるっす!」
『お野菜も焼け…』
「俺が食べるっす!」
『切原君沢山食べるね!偉い偉い』