第20章 青春の八重奏
「困ってたお婆さんをね」
『!』
パチンとアタシに向かってウインクする。本当にズルい人だよなぁ幸村君って。ますます好きになっちゃうじゃんか。
※※※
午前中の海でのトレーニングを終えた後はペンションに戻って昼食。昼食は軽めのサンドイッチ。昼食を済ませた後は皆はハードな練習に戻り、アタシはちゃちゃっと掃除して早めに夕飯の準備に取り掛かる。何で早めにとりかかるのかって?そりゃ今日の夕飯は河原でバーベキューだからだよ。
河原にバーベキューをするスペースを借りて。一色の道具はレンタルさせてくれるから食材とか飲み物を運んだりしなくてはならない。折角の強化合宿なのに皆にその手伝いをさせる訳にはいかないからアタシが早めにとりかかるって魂胆だ。
『紙皿、紙コップ、割り箸…』
向こうでモタつくのも嫌だし具材はある程度、金串に刺しとこう。後はー…そうだな…皆良く食べるし焼きおにぎりも沢山作っておこう。飲み物はお水、お茶、ジュース…ジュースってどんなのが良いのかな?炭酸系?果実系?
『うーん…』
「姫さん姫さん」
『あ、仁王君!』
「何をそんなに困っとるんじゃ?」
『飲み物どうしようって…』
それぞれ好みも違うから飲み物って種類揃えるの大変だよね。
「買いに行くのか?」
『うん、そのつもり。食材の買い出しもしたいし』
「じゃあお供、連れて行きんしゃい」
『お供?』
「待っちょき」
『あ、ちょ…仁王君?』
※※※
『あっ…と…御免ね?また買い物付き合ってもらっちゃって』
「大丈夫だよ」
とは言ったものの。仁王は一体何を考えているのやら。
※※※
「え?智桜姫の買い出しの手伝い?」
「なるべくゆーっくりして来んしゃい」
「ゆっくり?どうして?」
「デートじゃ、で!え!と!」
「なっ…仁王!!!」
※※※
デートって…俺ってそんなに分かりやすいかなぁ。抑えつつも割と積極的にアプローチしてるつもりだけど本人は全っ然気付いてはくれないし。でも皆がイメージしてる智桜姫と俺がイメージしてる智桜姫は全然違う。もし俺にしか見せない表情があるのだとしたら………それは押し切るべきなんだろうけど何せ確証は全く無い。