イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第5章 消せない熱 前編〈徳川家康〉
恋人でもないのにと、そう思うのに……嫌ではない自分に気付く。
振り払う事なんて出来ない。この手を伝わって感じる温もりを、離したくないとさえ、思ってしまう。
そんな自分に、は戸惑っていた。
(どうして?……なんでこんなに、離したくないって思ってしまうの?)
―――自分はもうすぐ、現代に帰るのに。
何故だか、胸がチクリと痛んだ。
……………………
…………
少し寂しげなワサビを御殿に残し、道すがらに、家康から事の経緯を説明されて、は小さく笑った。
「そんな事があったんですね。三成くんは相変わらずのドジっ子だなぁ」
「笑い事じゃないよ。そのせいで俺は遣いに行かなきゃならなくなったし、あんたも人の事言えないでしょ」
「え?」
「あんただって、充分鈍くさいし。……まさか自覚ないの?」
「よく言われますけど、そこまで鈍くさくは……ないような……」
「弁解すらも鈍くさいなんて流石だね」
「~~っ。い、家康さんは相変わらず意地悪ですね……!」
「何ソレ。反撃してるつもり?言っとくけど、そんな風に言われても可愛いだけだから」
「へ?」
「あっ……いや、何でもない。それより、畳屋の前に茶屋があるから……少し寄って行こう」
「は、はい……」