イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第5章 消せない熱 前編〈徳川家康〉
「ワサビ、もうお腹いっぱいになった?」
がそう訊くと、ワサビと呼ばれた小鹿は嬉しそうに足元へすり寄ってくる。
(可愛い……ワサビと離れるのも、ちょっと寂しいな)
そう思っていると、ワサビがピクッと顔をあげて、廊下の方へ振り向いた。
ワサビの反応で何となく分かりつつも、も同じ方向に視線を向ける。
するとソコには、思っていた通りの人物が居た。
ワサビの飼い主であり、が世話になっているこの御殿の主、家康だ。
「おかえりなさい、家康さん」
がそう言うと、家康は小さく「……ただいま」と答えた。
いつもと少し様子が違うなと思っていると、家康も草履を履いて庭に出てくる。
そして、の手をグイッと引っ張った。
「えっ?あの……家康さん……?」
「ちょっと用事があって城下に行くから、あんたも付き合って」
「用事、ですか?何の……」
「いいから。……説明は歩きながらするから、行くよ」
「……っ。分かりました」
家康が自然と指を絡ませて手を繋ぐから、は思わずドキドキと胸が高鳴ってしまう。