イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第5章 消せない熱 前編〈徳川家康〉
そう返事をして、家康は広間を後にする。
残された武将達は三成の後始末に追われ、信長と光秀だけが、特に何をするでもなく、少し愉しげにその光景を見つめていた。
……………………
…………
安土城を出て、自分の御殿へ向かいながら、家康はの事を想う。
(……確かに最近少し、元気がなさそうだったな。城下の市場にでも行けば、気分も変わるかも)
そう思っていると、不意にの顔が頭に浮かんだ。
まるで花が咲いたように笑う、の笑顔を思い出して、家康の心臓がドクッと跳ねる。
「……っ。別に、俺は……」
ボソッとそう呟くも、家康の足は速度を増して、御殿へ着く頃には、やや小走りになっていた。
家臣達に出迎えられつつ、「は?」と目についた女中に居所を訊く。
「つい先程まで、お庭で小鹿に餌をあげていましたが……」
「分かった」
それだけ話して、家康は足早にその場を後にする。
何を急いでいるのだろう?と、家臣や女中達がぽかんとする中、秋風が後押しするように柔らかく吹いていた。