イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第5章 消せない熱 前編〈徳川家康〉
「おい、家康!話はまだ……」
世話焼きな秀吉が家康を引き留めようとした時、少し離れた位置でバシャッとお茶の零れる音が聞こえ、秀吉は音のした方へ振り向いた。
案の定、三成がお茶を零している。
当の本人は不思議そうな顔をしているが、予想していた他の武将達は、着物にかからないよう、事前に距離を取っていたようだ。
「あれ?おかしいですね……どうして零れたんでしょう?」
「三成、お前は何もせずにじっとしていろ。秀吉、そこにある手拭い取ってくれ」
「政宗様。私の方が近いので、手拭いは私が……あれ?」
三成が立ち上がった拍子に、盆に乗っていた他の茶器まで引っくり返してしまった。
散々な状態に、秀吉は思わず頭を抱える。
家康はその様子を横目で見やり、小さく溜め息をつきながら「ほらね」と呟いた。
「……広間の畳、染みがあると格好悪いので、早めに新しいの注文しときましょうか」
「ああ。……悪いな、家康。すぐに頼む」
「はい」
「あ、ちょっと待て」
「まだ何かあるんですか?」
「を気分転換に連れ出してやってくれないか?ここ最近の空気に気が滅入ってるんじゃないかと思ってな」
「……どうして俺が」
「はお前の御殿で預かってるだろ。で、そのついでに畳屋へ寄って注文してきてくれ」
「…………」
「頼んだぞ、家康」
「……分かりました」