イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第36章 あんたが望むなら 後編 <徳川家康>
そう言って、家康は不機嫌そうに寝床へと向かった。
残された信長は、まだ少し可笑しそうに笑っている。
家康の姿が見えなくなった頃、ポツリと小さく呟いた。
「この俺の命を救い、家康までも射止めるとは、とんだ女を拾ったものだ。……ただの同情かと思ったんだがな。」
信長は一瞬だけ、まだ幼かった頃の家康を思い出し、すぐに頭を振った。
信長にとって、それらは思い出しても意味が無いと共に、大事なものだからだ。
もうすぐ……
あと数日で戦が始まる。
家康や信長にとっては当たり前の現実で、にとっては初めての戦が――……
…………………………
………………
数日の行軍により、織田軍は無事、上杉武田軍の支城へと辿り着いた。
本陣を敷き、三成の策と信長の指示で戦が進められていく。は後方支援の隊で怪我人の手当て等にあたっていたが、運ばれてくる怪我人達と血生臭さに手が震えていた。
(……震えてる場合じゃないのに……っ。お願いだからちゃんと動いて!)
心の中で何度も自分を叱咤し、震える手を必死に動かす。
刀傷、矢傷、銃創。それらを目の当たりにしながら、これが本物の戦なのだと痛いくらいに思い知った。
しばらくして、本陣に居た三成が戦況を伝えに来てくれた。
戦況自体は織田軍の方が優勢らしい。
が多いと思っていた怪我人の数も、想定していたよりは少ないと教えられた。
現段階で未だ死人は居ない。
けれど、銃で撃たれた怪我人の割合が多く、三成も顔色を曇らせる。