イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第36章 あんたが望むなら 後編 <徳川家康>
一方その頃。
屋敷の外で寝ずの番をしていた家康は、信長に声をかけられていた。
家康はいつもと変わらぬ口調で、「何か用ですか?」と応える。
「何故寝ずの番を交代しなかった?少し前に交代の兵が来ただろう」
「来ましたけど……。別に、まだ眠くなかったんで」
「ほう。今度は貴様が不眠症というわけか」
「そんなんじゃないです」
「ならば、どういう訳だ。休める時に休んでおかねば、いざという時に役に立たなくなる。貴様は俺の駒だという事を自覚しろ。」
信長は家康の隣に腰を下ろし、夜空を仰いだ。
今夜は生憎と雲が多く、あまり星は見えない。
「駒だという自覚はしてますよ。だから、戦には負けない。絶対に。」
家康の瞳に揺らめく野心が、信長にも見て取れる。
本心なのは間違いない。
けれど……
「であれば、尚更休んで来い。……の事を気にしているのなら、とんだ杞憂だ。先程屋敷の女中から、もう眠ったと聞いている」
「え?」
突然、信長の口から出た名に驚き、思わず振り向いてしまうが、すぐに家康はフイッと顔を逸らし、苦虫を噛み潰したような顔になる。
その様子に、信長は口角を上げて笑った。
「まさか貴様がそんなにもあの女に情を移すとはな」
「なっ……情なんて移してません!俺は……」
「別に俺は同情だろうと恋慕だろうと、どちらでも構わん。ただ、今のような有り様ではこの先の戦に支障が出かねん。……どうやら戦の準備中も、あまり寝ていなかったようだからな」
「……っ!恋慕なんて、それこそ馬鹿馬鹿しい。寝ます。後は宜しくお願いします。」
「ああ、そうしろ。それと貴様は当分、寝ずの番をするな。分かったな?」
「……言われなくても、そうしますよ。失礼します。」