イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
(俺はあんな風に笑ってなかった。誰にも気を許さなかったし、踏み込ませなかった。弱味を見せれば、つけ込まれるだけだ。)
どうして笑えるのか。
半ば無理矢理連れて来られて、知らない者達の中で、不安は確かにある筈なのに。
考えても考えても、家康には分からない。
(だからこんなにも……気になるのかな)
そう思いながら、家康は静かにの部屋を後にした。
僅かな物音に、が薄っすらと目を覚ます。
撫でられた感触、優しい声。
の目尻には涙が溜まり、上体を起こすと、それは頬を伝い、ポタリと落ちた。
「また……来てくれたんだ」
悪夢が怖くて、眠るのが嫌だった。
だから眠らなかった。
今でも、夢には見る。
けれど、家康が来てくれるから……
「前より、怖くない」
家康と見た、数日前の星空が忘れられない。思い出すだけで、胸の内がじんわりと温かくなる。
――勇気が出る。
「ふふっ。大袈裟かもしれないけど、家康が居てくれるから、明日も笑っていけるんだよ、私。」
ゆっくりと立ち上がって、静かに襖を開けると、明るい星達があの夜と同じように優しく瞬いている。
「……今夜も綺麗。電線が無いって、いいな。」