イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
「何?」
「あ、ありがとう!」
昨日はいらないと言った言葉。
けれど、今日は何だか嬉しくて、家康は柔らかく目を細め、微かに笑った。
「うん。どういたしまして。」
「……っ」
家康が部屋から出ていき、襖が閉まった後。は己の胸の高鳴りに困惑していた。
ぎゅっと胸を押さえながら、熱を持った頬に触れる。
「私……どうしちゃったんだろう」
少し気にかけて貰って、優しくしてくれたからって……
淡く芽生え始めた気持ちを、頭を振って否定する。
「嬉しかったから、勝手に気持ちが勘違いしちゃってるんだ。恋なわけ、ない。……落ち着かなきゃ」
恋だと錯覚しそうになるなんて……
どうかしてる。
家康だって、私の事、きっと何とも思ってない。
――そう思った時、僅かに胸がチクリと痛んだ。
「家康が言うように、私って本当に馬鹿かも……」
淡い恋心。
それに確信を持つのは、そんなに先じゃない。
そうしてそれは、だけではなく、家康も――……。