イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
家康はそう言って襖を開け、その先に広がる夜空を見上げた。
振り返り、の手に、そっと触れる。
「まだ少し、ここに居てあげてもいいよ。……こっち、来て。その方が、星がよく見えるから」
「……はい」
家康に優しく手を引かれて、二人は静かに立ち上がり、縁側へと腰を下ろす。
部屋の中はただただ暗いだけだったのに、外はとても明るかった。
確かに雲も出ているが、月と、無数に瞬く星たちが、とても優しい光を放っている。
はこの乱世へ来て、初めてまともに夜空を見た。
(どうして気付かなかったんだろう……)
この時代、星たちの光を遮るものは何もない。当然、空は驚く程に澄んでいる訳で。
「……星って、こんなに明るかったんですね」
「なに当たり前の事言ってるの。……雲一つ無い夜なんて、明る過ぎて迷惑な位だよ」
「ふふっ。そうなんですね」
「……というか、いい加減、敬語止めたら?」
「え?」
「呼ぶ時も、家康でいい。……いちいち気を遣われると、その方が面倒。」
「……」
は少しだけ考えて、少しだけ頬を染めながら、小さく口を開いた。
「い……家康……」
ただ、名を呼んだだけ。
なのに、その瞬間。
二人の中で、確実に何かが変わった。