イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
今にも泣きそうな声に、家康は一瞬ギクリとした。
――信長様に言われたから……
そう言ってしまったら、駄目な気がした。
壊れてしまう気がした。
別に、と特別仲が良いわけでも、前から気にかけていたわけでもない。
信長からの命がなければ、ここ最近の彼女の食事の事だって、わざわざ女中に訊きに行ったりしなかった。
――特に興味なんて無かった。
自分から関わる気も無かった。
その事が、何故だか酷く、家康の心をざわつかせた。
「……別に。たまたま、気になっただけ。今も用事が終わって、偶然部屋の前を通りかかっただけだから。」
「そう、ですか……。でも、ありがとうございます」
「礼なんていらない。本当に、たまたまだから。」
「……それでも、嬉しいです」
「………っ」
安心したように、柔らかく笑うに、家康の鼓動は大きく高鳴って――……
頬が熱くなるのを感じ、思わず目を逸らした。
「……少し風にあたって、星でも見れば。今夜は少し雲が出てるけど、それでも綺麗だよ」
「はい。……家康さんは……御殿に戻るんですか?」
「え?」
「あっ、ご、ごめんなさい!戻りますよね!私ったら、変な事言ってしまって……」
「……あんたって無防備だね。」
「家康さん……?」