イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
「……?」
あまりに苦しそうな声が聞こえて、思わず「入るよ」と返事もないまま襖を開き、部屋の中へと足を踏み入れる。
は眠っていた。
じっとりと、まとわりつくような汗を滲ませて、顔を歪ませながら……
家康が起こそうとして近付くと、は、やっとの思いで絞り出したような、涙混じりの声を上げた。
「もう、止めて……」
小さな声だった。
なのに、まるで悲鳴のように聞こえた。
「……」
家康が思わず名を呼ぶと、一瞬ビクリと身体を震わせてから、が目を覚ました。
ぼんやりとした視界で、相手が誰か分かっていないのだろう。
は反射的に、バッと顔を両手で庇った。
「やっ……」
「、違う。俺だよ。家康。大丈夫だから手を下ろして」
「……っ……?」
「大丈夫。……恐い夢でも見たの?」
家康が、あまりに優しい声で訊いてくるから、は夢か現実か分からないまま、コクンと頷く。
浅い呼吸のまま、涙が溢れた。
「いつも、見るの。……あの人に、会いたくないのに……」
「……そう。……とりあえず、水を持ってきてあげるよ。汗が凄いから、その間に着替えておくといい」